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ツール・ド・東北2014  
2014年10月 半田二三男 
 

 秋の気配を感じはじめた早朝、吉本氏の車は順調に走り出し新東名高速を東へ、渋滞の首都高速を抜け東北道を北へ進む。三連休の初日、車の数は増していた。吉本、横地の両氏に運転をお願いし、後部席に石井氏が鎮座し、その横に私であった。休憩、昼食、補給を交えスタート&ゴールの会場、宮城県石巻専修大学へ到着した。走行距離600km、9時間を要す。後着の塩川、兼高両氏とは久しぶりである。明日の健闘と無事完走を誓い受付を済ませると、カーナビだけが頼りの夜道をニ連泊お世話になる奥松島のかくれ宿、旨い魚と原風景のぬくもり大高森観光ホテルへ着するなり、宿側からのリクエスト風呂ではなく夕食をと、早速の祝杯を重ね早い就寝に着く。


 3時30分静寂の中、覚醒していない眼(まなこ)に対向車のライトだけは眩しく光を放っている。津波の爪痕を横目に指定された駐車場へと向かうが、皆口数は少なめだ。そしてまだ寝静まっている仮設住宅近くへ着く。バイクを積んだ車が次々と参集する。この大会は2011年3月11日発生した東日本大震災沿岸被災地(宮城県)を、自転車で走ることを通して再生への思いを分かち合い、復興を後押しして輪を広げていこうの趣旨として昨年から開催された。『復興の銀輪ことしも』である。何れも石巻専修大学を発着点に石巻市、女川町、南三陸町、気仙沼市の4市町を巡る。第2回目の今年は『気仙沼フォンド』(220km)が新設され、前回最長の南三陸町を通過して折り返す『南三陸フォンド』(170km)に同町の神割崎が折り返し点の『北上フォンド』(100km)と『女川・雄勝フォンド』(60km)の4コースで順位やタイムを競わないファンライド方式で実施され、エイドステーションは20Kmおきに9ヶ所設けられ、その土地が自慢とする郷土料理が振り舞われる。しかし気仙沼フォンドは平均26km/h走行しないと間に合わないと。
 身支度してまだうす暗い中を蛍が光を放つように、ライトを点滅させ専修大キャンパスに入るや、まさかの後輪パンク。『北上フォンド』6:45出発の吉本氏の手助けによりパンククリヤー。気仙沼フォンド5:30スタート位置に付き雑談、横地氏大会本部からの要請でGPS(大会側から横地氏の現在走行位置確認)の取付とインタビューに向かい我がグループの代表として復興支援を強くアピールしヤフーのサイトで全国に発信された。 スタート前5:15まさかの二回目の後輪パンク・・・タイヤチューブは新調したのに?何故?原因解明されないまま気持ちだけは完全に落胆した。俺やめるよの言葉しか出なかった。混迷している中、冷静に吉本氏が荷崩れ用に持って来たホイールが車に有るから使ってみてはと、もう間に合わないよと自暴自棄になっていた己が恥ずかしい。労苦惜しまず途中で落ち合おうと取りに出掛けてくれた。その諦めない気持ちをいただく。その後ろ姿に?すまない?と一礼。携帯で数回場所の連絡を取り合いホイールを受け取り、会場内にあるシマノのブースに赴き、ギアの調整と空気圧のサービスを受け、スタートラインに戻ると既に南三陸フォンド170kmのスタートが10人一組ほどで写真撮影を交え行われていた。早く走らせてくれと苛立つ。6時20分、私のツール・ド・東北2014が50分遅れで始まった。フラットな10km程であるが濃霧に包まれ、サングラスの暗さと相まって視界不良、それでも走れた喜びに必死にペダルを漕いでゆく。まるで一人暴走族の如く走る走る。コースを疾走して行くと道路より高く盛土された簡素な場所に白っぽい同じ様な平屋が建ち並ぶ、直ぐ仮設住宅と察することができる。客人を待ってたかのように外に出て居て出迎えてくれる。この日を楽しみにしていてくれたのだろうか。派手なパフォーマンスなどせず物静かに手を振り続けてくれる。多くのライダーがそれに応えていく。いつの間にか一体感となり、互いに手を振りあっていた。一期一会の者どうし、その姿がだんだんと小さく小さくなって・・・一瞬のドラマのように二度と逢うことは無いだろうと。
 19km先の第1エイドステーション女川復興まちづくり情報交流館前に着。かつてサンマの水揚げ量日本一と誇っていたのだが、視界に飛び込んだのは津波で倒壊したままの江島共済会館だ。横倒しになり鉄骨だけが剥き出しになったままだ。同じゼッケンカラー(赤色)を探す、誰も居ない・・・さあ急ごう。第2エイドまでの38kmへ、ここから登り下りの連続が始まるのだ。何とか追い付きたい、ペダルを漕ぎ続ける。 雄勝硯伝統産業会館前に着。気仙沼フォンドのライダーは皆無。2km程の釜谷峠を貫く釜谷トンネルは暗く長い、さらに進むと北上川に架かっている新北上大橋を渡るとしばしフラットなコースとなり右側に追波湾の視界が広く見えてくる、気持ちがいい。
 第3エイドの神割崎に着。早速スタッフに気仙沼フォンドのライダー所在を訪ねると、2、3人居ますと、少し希望が出てきたが余裕の時間などない、早めの補給を済ませ出発。国道398号から国道45号へ志津川湾を望みながら沿岸部を進む。過去の津波浸水区間の標識が繰り返し見られる。 第4エイドの南三陸町、伊里前福幸商店街へ着。多くの応援フラッグが旗めいていて郷土料理の『がんづき』より『南三陸シーフードカレー』を食べたかったが、エントリーするフォンドに依り提供されず、仕方がないから『がんづき』を食ってやろう。
 気仙沼市に入る。アップダウンは相変わらずだ小刻みに繰り返す、町並みの様子が見えてくる折り返し手前最後の第5エイド階上小学校へ入ると兼高氏は市街地に、短いエール交換。ササニシキのおにぎり3コ入りの弁当の内側に「ゴール目指してがんばってください」のメモがあった。こんな応援メッセージは嬉しく力になると呼びたくなった。あと20分で閉門ですよ〜と係員。これより50分位、市街地を時に10人ぐらいの縦列に、時に3人程で走り去る。赤信号時、コース誘導員の方に津波はどの高さまで来ましたかと尋ねると「あの電線の辺りだよ」エーッと絶句した!津波の恐ろしさ忘れるなと。
 さあ、復路だ!一段と下肢に力を入れ漕ぎ続ける。国道45号を左折し、岩井崎の給水ポイントに余裕の無い時間を気にしながら第6エイド道の駅大谷海岸へ着。さんま蒲焼丼大変美味しい。多くのライダーが休憩していたが間に合うの?と・・・復路もアップダウンの連続に小刻みにギアを入れ替える中、3回目のまさかが発生、ディレィラーが全く作動不能状態になる。フロントギアは一番小さい位置、リアギアは一番大きい位置でダンシング、小高い山を下ると第7エイド蔵内漁港着。運よくバイクメンテナンス有り。祈る気持ちで説明。先、ライダー二人がサービスを受けていた。20分程の修理、休憩の中『わかめまんじゅう』とスープを頂く。原因はワイヤーが延びきっていた。
 私には運がある神に見捨てられていなかったと勝手解釈をし、もうこれで怖いものなど無いようだと錯覚。水を得た魚のように、山坂千里の九十九祈り行かねばならぬ石巻。 第8エイドの南三陸ホテル観洋前に着。フカヒレスープをしっかり頂く、この男緊張感が欠陥しているのでは、自分でもわからない。
 時折、腰の痛みが発生し、下肢に筋肉痛も発生する。アップダウンを繰り返す下り坂でストレッチをして凌ぐ、再び追波湾を左に見て第9エイドのにっこりサンバークの入口に着するも「制限時間が追ってます」のアナウンスに奮起、十三浜茶碗蒸しにはありつけず残念であるがラスト25km、ほぼフラットだ。雄大な北上川はゆったりとした流れに心と気持ちが癒される。ここまで来た制限時間内にどうしてもゴールしたい。力を抜くことなくペダルを漕ぎ続けた・・・17:15苦しみながらもやっとこゴールの専修大学に到着。先にゴールしていた皆さんが暖かく出迎えをしてくれた・・・終ったあ〜 2泊目を迎えるホテルへの帰路、吉本氏からパンクの原因が判明と。ホイールを取り巻くチューブを保護するリムテープの破損であった。う〜んこんなの判んないよね〜と横地氏と異口同音。いやいやそれでは困りますよと石井氏。そんなこんなでホテルに戻る。旨い酒で完走を実感し祝杯。旨い魚と旨い米を堪能。


 大会参加に関し、東北大震災の復興に自らも率先躬行し、大船渡で汗してその思いを当クラブ全体で支え続けていくことを切実に訴え応募してくれ今回も驚異的な走りをした有言実行の横地氏。どんな事案にも速やかに対処し準備、細心の注意を怠ることなく、バイクも己の身なり日頃のメンテナンスが如何に大切なことだと。常にアンテナを張りめぐり、情報はメモを取り学習能力を向上されている石井氏。冷静で普遍性を持ち、解決策は必ず有り、諦めること無用と的確なアドバイスで対応してくれた吉本氏。?もし?この場に居てくれなかったら今日の感動は得られなかったと深く感謝。この三人の方それぞれに強い個性の持ち主、時にまとまらない事も・・・でもね。根は優しく頼りになる人達。暖かい気持ちにふれ、他力本願ダメ人間の私は幸せ者、皆さんありがとう。沢山の思いを胸に東北道を南下、どこにでも見られる日本の風景に思いを馳せる。
 春まだ浅き頃、苗代田に蒔かれた種が灼熱の太陽に立ち向かい緑色の穂先を凛とさせきびしい自然に耐え黄緑から黄金色に輝く秋を迎え、大きく実り頭を垂れ生物に恩恵を享受し自らの終息を迎え種を残し次世代への引き継ぎを繰り返す。一日も早い復興を願わずにはいられない。被災地の皆様とあの仮設住宅のおばちゃん達と共に頑張りたい。
 自分を見失うことのないような稲穂のように力強く!!


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Last-modified: 2014-11-05 (Wed) 20:55:17 (JST) (1804d) by kanrinin
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